紺碧の向こう

卒論は新海誠論でした

【ネタバレ注意】『すずめの戸締まり』は『星を追う子ども』のセルフオマージュである

【注意】本エントリは新海誠監督の2022年公開『すずめの戸締まり』および2011年公開『星を追う子ども』のネタバレを含みます。
 
『すずめの戸締まり』は『星を追う子ども』同様、「行きて帰る物語」であり「喪失を抱えて生きる」がテーマとなっています。『星を追う子ども』の主人公・アスナにとっては初恋(?)の少年との別れ、『すずめの戸締まり』の主人公・鈴芽にとっては東日本大震災で亡くなった母親との別れと、大きさは違えどどちらも「喪失」であるといえるでしょう。
 
『すずめの戸締まり』で描かれる「常世」は、『星を追う子どもの地下世界アガルタの最深部・死者の魂の行き着く場所「アストラム」に非常によく似ています。青や紫に輝く銀河。どこまでも続く星空。新海監督にとっての「黄泉国」のイメージが、あの藍色の空間なのです。
さらに『すずめの戸締まり』終盤に、鈴芽が掘り起こした「すずめのだいじ(タイムカプセル)」の缶にはお菓子の名前のように「Agartha(アガルタ)」と書かれており、その箱の中には常世に行くための手がかりがあります。これは「常世=アストラム(黄泉国)」の裏付けでもあり、過去の新海作品を観てきた者にとってのご褒美でもあります。
また、今作に登場する「要石」の意匠は『星を追う子どものアガルタ世界のものと酷似しています。
以上のようなテーマと意匠の類似。このことから『すずめの戸締まり』は、新海監督が『星を追う子ども』をセルフオマージュしたものであると考えられます。
 
『すずめの戸締まり』を観た方は『星を追う子ども』を観るとより理解が深まるはず。(逆でも交互に繰り返し観ても楽しいです。)